愛犬の体がよろよろふらついたり、首を一方へ傾けるような姿勢のままだったりすることはありませんか?それは、もしかしたら内耳炎、前庭疾患の症状かもしれません。
人間が三半規管によって身体の正確な位置情報を伝えてバランスをとっているように、犬もまた三半規管によって脳に頭や身体の正しい位置情報を伝達して体の平衡感覚を保っています。
犬がかかりやすいと言われる外耳炎。その炎症が中耳・内耳まで広がって内耳炎を起こしてしまいす。
そこで今回は、内耳炎の原因、症状治療、予防策をご紹介いたします。
犬の内耳炎とは
中耳は鼓膜とその奥の空間(鼓室)、内耳はさらに奥のリンパ液で満たされた空間の事を指します。
内耳は、前庭、半規管、蝸牛(かぎゅう)という器官からなり、聴覚と平衡感覚に関係する神経が伸びてきています。
その中の内耳が炎症を起こしている状態を内耳炎といいます。
中耳炎まで進んでいるのかどうかの判別は外耳炎と症状が似ているため難しい。
ただ、外耳炎も中耳炎も耳から分泌液が出る「耳ダレ」が起こることがあるが、外耳炎から中耳炎に進行すると耳ダレの量が多くなることがある。「朝起きて耳の周りがベトベトになるほどの耳ダレがあった場合は、中耳炎の可能性が高いです。
内耳炎の主な原因
- 細菌性(外耳炎、中耳炎からの波及)
- 感染性(血中の病原体が感染)
- 腫瘍
- 外傷(頭への衝撃など)
外耳炎が進行して鼓膜に穴が開き、炎症が中耳・内耳まで広がった細菌感染が原因になることが多いです。
真菌やダニ、異物混入、ポリープなどがきっかけになることもあります。
外耳炎から鼓膜を通って中耳炎・内耳炎に波及することが多いですが、
口腔内や鼻腔内の炎症から引き起こされることもあります。
内耳炎の主な症状
- 頭を振る
- 耳を掻く
- 顔が傾いている
- 口を開けるのを嫌がる
- 倒れる
- よだれが出る
- 耳を触るのを嫌がる
- 瞬きができない
- 元気が無くなる
- 食欲不振
- 第三眼瞼(目頭の内側に隠れている第三の瞼)の突出
頭を傾けたり(斜頚)、回転するように歩く動作(旋回運動)が見られることがあります。
内耳には三半規管があるため、姿勢が傾いてしまい、オス犬の場合はおしっこをしようと片足をあげた途端にフラフラする、といった症状が出たりします。
内耳の近くにある神経にまで炎症が及ぶと、顔面神経麻痺などの症状も起こります。
また、神経症状に伴い嘔吐や食欲不振、元気が無くなってしまうこともあります。
内耳炎の主な治療
- 抗生剤や抗真菌剤
- 抗炎症剤(内服)
- 抗生剤(内服)
- 皮下点滴(場合による)
- 鼓膜切開
- 外耳道、中耳の手術
内耳炎の症状は、他の神経疾患や腫瘍などの病気との区別が、とても困難です。
細菌や真菌などで炎症を起こしている場合は、一般的に抗生物質や抗真菌薬、抗炎症薬等による内科的治療を行ないますが、原因が腫瘍などの場合は外科的治療が行なわれることもあります。
そのため、症状や経過、治療反応により、他の疾患の可能性を除くために、CT検査やMRI検査まで行う場合もあります。
神経症状をともなうような重度の感染が疑われる場合や、嘔吐などにより食事もできない場合では点滴を入れながらの入院処置が必要なこともあります。
内耳炎の診断、治療のために行われる可能性のある検査
検査 | 目的 |
---|---|
神経学的検査 | 神経の異常、神経疾患の有無を調べます。 |
耳鏡検査 | 診察室で外耳道内を観察します。炎症、痛み、腫れがひどい場合は検査できないので、治まってから再検査します。 |
耳垢検査 | 外耳道での細菌、マラセチアなどの増殖を調べます。 |
耳垢の細菌培養同定、 感受性試験 |
外耳道で増殖している細菌の種類を確認し(培養同定)、どの抗生剤がその細菌に効果があるか調べます(感受性試験)。 |
X線検査(頭部) | 中耳、内耳の液体や軟部組織、骨の変化、腫瘤(しゅりゅう)をある程度みることができます。 しかし、慢性例でも検査で異常がみられない場合も多いです。 詳しく検査を行う場合、軽い麻酔をかけることもあります。 |
耳内視鏡 | 外耳道内の腫瘤や異物、鼓膜や皮膚状態などを確認します。 |
鼓膜切開 | 鼓膜を切開し、中耳での細菌培養同定、感受性試験と洗浄を行います。 |
CT検査/ MRI検査 | 中耳、内耳の状態や腫瘍の有無などを、X線検査より詳細に判断できます。 |
これらの検査は必要な場合に、治療や診断を行う際にそれぞれ組み合わせて行われます。
また、動物病院によって、耳の内視鏡やCT、MRIの設備が限られているので、他の動物病院へ紹介され、検査を受けることもあります。
他の病気の可能性も考えられます。
内耳炎では、神経症状や嘔吐などがみられるので、他の病気の可能性を除外するため、血液検査を行うこともあります。
内耳炎、中耳炎は関わる神経を通じて、脳に感染を起こし、膿が溜まって袋状になった膿瘍(のうよう)や髄膜炎(ずいまくえん)を引き起こす例もありますので、注意するべき病気です。
内耳炎の主な予防
外耳炎の管理で予防できる場合も十分あるので、耳の症状を放っておかないようにしましょう。
- 定期的な耳掃除
- 定期的な歯科検診
- 耳を清潔に保つ
- 正しい耳掃除
- 毎日耳のチェック
中耳炎や内耳炎を予防するには、まず外耳炎にならないように注意することが大切です。
耳を清潔に保つことで細菌などによる感染を防ぎ、外耳炎を予防することが大切です。
ところが、間違った方法での耳掃除やシャンプー液の耳への流入などが、かえって外耳炎を引き起こす原因となることがありますので、注意が必要です。
正しいお手入れ方法を実践しましょう。
また、日頃からのこまめな耳の観察も大切です。耳垢の量や色、耳の臭いをチェックし、異常がみられた場合は早めにかかりつけの動物病院に行きましょう.
耳掃除が苦手なワンちゃんは、「耳掃除トレーニング」をしましょう。
好発品種
スパニエル種など耳の長い品種で起こりやすいことが知られています。
イングリッシュ・コッカー・スパニエル
アメリカン・コッカー・スパニエル
キャバリア・キングチャールズ・スパニエル
キング・チャールズ・スパニエル
パピヨン(コンティネンタル・トイ・スパニエル)
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
アメリカン・ウォーター・スパニエル
ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル
ピカルディー・スパニエル
ブルー・ピカルディー・スパニエル
ブリタニー・スパニエル
フレンチ・スパニエル
クランバー・スパニエル
フィールド・スパニエル
サセックス・スパニエル
ロシアン・スパニエル
ボイキン・スパニエル
ジャパニーズ・スパニエル(狆)
チベタン・スパニエル
チャイニーズ・スパニエル(ペキニーズ)
ちょっと深掘り!病気の好発品種
犬は様々な種類があり、その種類によって発症しやすい病気があります。ご参考ください。
キャバリア:心臓の弁膜障害
ダックス・フント:椎間板疾患
シーズー:アトピー
アメリカン・コッカー・スパニエル:緑内障
パグ:間擦疹
スコティッシュ・フォールド:関節症
メイン・クーン:肥大型心筋症
柴犬:緑内障
まとめ
内耳炎を防止するには、まず外耳炎にならないよう毎日の耳チェックは欠かせません。耳を触られるのが苦手なワンちゃんは、耳掃除トレーニングでしつけすれば、大人しく耳をチェックされてくれます。耳のチェックは毎日、耳掃除は週一程度がおすすめです。もし、耳を触られるのを嫌がり、耳を掻く、顔が傾いているようでしたら、炎症があるかもしれません。かかりつけの医師に相談ください。