「犬が、吠えてほしくない場面で吠えるが理由が分からない」「理由は分かる気がするけれど、どうしつければ改善するのか分からない」という飼い主さんは少なくないはずです。そういった皆さんに向けて、吠える原因・原因の突き止め方・しつけ方法などを紹介していきます。適切なやり方で取り組めば、結果が出るものですよ。
記事監修
Kawashima
「犬が吠えるのは人間に求められてきたから」と知るとしつけしやすくなる
犬は人間の相棒として、牧畜や狩猟などをしてきた生き物です。
「人間の役に立つため」という視点で、犬の能力が押し上げられていき、「今の犬」へと進化しました。
ですから、犬は吠えるのが当然です。
犬種によって吠えやすい・吠えにくいはありますが、全く吠えない犬はほぼ存在しません。
「犬は吠えるのが当たり前」と感情だけでなく理屈で理解しておくと、しつけがしやすくなるはずです。
「無駄吠え」は「犬のしつけをする人間」側の呼び方です|吠えるのが当然!
また、「犬が人間にとって都合の悪い場面で吠える」ことを「無駄吠え」と言いますが、これはあくまで「人間にとって無駄」というだけです。
一例として、一部の部族の村には現在も絶対に犬がいて「番犬」のような仕事をしています。
番犬が吠えないようでは困りますよね。
犬には本来そのような性質があってもおかしくないわけですが、日本人の場合は「人間の都合があるので、むやみに吠えるのは困る」という認識になっているわけです。
「では、犬に自由に吠えさせるのが良いのか」というとそんな事はありません。
近所迷惑になりますから、「むやみに吠えさせないためのしつけ」が必要です。
しつけが大変?よく吠える犬種とその起源
1:愛玩犬
もともとはヨーロッパの貴族の女性などが、楽しむために小型犬を飼っていたと言われています。彼らは、侵入者を察知し、追い払うための番犬の役割も担っていたそうです。
ですから、非常に小さな物音でも敏感に察知し、吠える犬が多いです。
今で置き換えてみれば、例えば「隣の家の住人がくしゃみをした音」だけでも吠えるかもしれません。
具体的に言うと、チワワ、ポメラニアン、パピヨン等、小型犬の大半は本来よく吠えます。
ですが、いわゆる「鼻ぺちゃ」のペキニーズ、シーズー、フレンチブルドッグなどは比較的吠えにくいので、しつけが楽かもしれません。
牧畜犬
吠える事によって、羊や牛をコントロールしたり、群れをまとめてきたりしていた犬です。
中でもボーダーコリーはかなり吠えやすいです。
また、シェットランドシープドッグ、コリーなどもよく吠えます。
これらの犬種は小さなきっかけでも、よく吠えます。
威嚇する際に吠えるのは当然ですが、「喜び」などプラスの感情を抱いているときでも吠えることが少なくありません。
狩猟犬
ダックスフンド、ビーグル、テリア系などが該当します。
ビーグル:野兎を追いかけ、人に報告する目的で、遠くまで届くように吠える
ダックスフンド:巣穴の中にいるアナグマを狩っていた犬であり、野太い吠え声が地上にも響きます
ヨークシャーテリア:小動物を刈っていた犬であり、小さな物音や動く物があると敏感に吠えることが多いです。
現代の日本人はこれらの犬をペットとして飼っていますが、やはり「吠えるのが普通」ですね。
日本犬
日本犬は警戒心が強く、小さな物音も察知して吠えていました。
そんな日本犬ですが、年齢を重ねると「余計な動きはしないようにしよう」という気持ちが働き、不必要に吠えたり動いたりしにくくなる場合があります。
また、日本犬には「家族には忠誠心を持つが、それ以外の人間を警戒し吠える」という傾向があります。
それでも日本犬は「無駄吠え」をしつけによって制御しやすい犬種だと言えますが、子犬のうちから「社会化」を進めていかないと、他の犬や他者がいるだけでむやみに吠えるようになる恐れがあります。
犬の「吠える」をちょっとしたしつけ・環境変化でコントロールしましょう
犬の吠えを完全になくすことはできませんが、少しのしつけ・環境変化で減らすことができます。
具体的には何をすればいいのでしょうか。
1:トイレなどの生活空間全般を整える
人間と同じく、犬も生活環境が悪いとストレスが溜まります。
ストレスが蓄積すれば吠えやすくなる可能性が高いです。
「犬なんだから、空間を与えておくだけで後は勝手に過ごしてくれる」という考え方は間違いです。
2:食事を整える
基本的には「一定以上の品質のドッグフード」さえ与えていれば、栄養バランスに問題はありません。ただし、食べ過ぎ・食べなさ過ぎには気を付けましょう。
3:健康管理
犬は「ここが不調です!」とは教えてくれません。
日々犬の身体の様子や体調をチェックし、できる限り健康でいてもらいましょう。
異変があれば、動物病院に行くことも検討してください。
4:運動によるエネルギー発散
運動不足だと健康にも悪いですが、「エネルギーが有り余って吠える」という事が増えます。
この状態だと、しつけがしにくくなるかもしれません。
きちんと(できるだけ)毎日散歩などの運動をしましょう。
5:社会化
「家族や、家の中だけでなく、外の世界にも慣らしていこう」という事です。
そうしないと、先ほどもお伝えした通り、別の犬や他者などが視界に入るだけで吠えるようになるかもしれません。
ただし、いきなり慣らそうとせずに、徐々に行っていきましょう。
犬の吠えに対するしつけのためには「なぜ吠えるのか」を知る必要があります
- いつ
- どこで
- 何をしているときに
- 何に向かって
- どのように吠えるのか
を整理してみましょう。
すると、「なぜ吠えるのか」が見えてくる可能性が高いです。
一例として、
「夕方の散歩で(いつ)、あの家の前で(どこで)、歩いているときに(何をしているときに)、家に向かって(何に向かって)、大きく吠える(どのように吠えるのか)」
などですね。
「家」に対して何か警戒して吠えているのかもしれませんし、楽しそうな音が聞こえて興奮して吠えているのかもしれません。
以下の表を参考にしつつ、分析してみましょう。
吠えの種類 理由と特徴
警戒 | 普段と異なる、人影、ニオイ、物音などに吠える。それらを飼い主に報告する意味で吠える |
---|---|
要求 | 抱っこしてほしい、何か食べたい、遊んでほしいなど、何かを要求する意味で吠える |
防守 | 我が身、飼い主、玩具、食べ物、縄張りなどを守るために吠える |
攻撃 | 威嚇、「攻撃するぞ」という意思表示、追い払うために吠える(怖がっていても、このタイプの吠え方をすることがある) |
興奮・喜び | 嬉しさ、楽しさで吠える。少しの刺激で興奮して吠える |
ストレス解消 | 遊び・運動不足、一人遊びが多くつまらない等、ストレス解消の目的で吠える |
犬の身体の動きから、犬の気持ちがある程度分かります
犬の身体の動き(そのとき身体のパーツを置いている位置)によっても、犬の気持ちがある程度分かります。
特に尻尾と耳を見てみましょう。
「怖い」ときは、耳が後ろに引かれたような状態になります。
「警戒・緊張」の際は、耳が前を向いた状態で吠える場合が多いです。
尻尾の上げ下げにも「犬の気持ち」が出るので、普段から観察しておきましょう。
(絶対ではありませんが、上がる=興奮、下がる=リラックス という傾向があります)
それでも分からなければ、オヤツを食べさせるという手もあります。
怖い、興奮などの感情によりストレスレベルが高い場合は吠える事をやめず、おやつを食べないケースが多いです。
逆にストレスレベルが低いのであれば、吠えるのを中断して食べる(食べなくても、気が向く)可能性が高いです。
犬が吠える原因が分かったらしつけなどで対応できるかもしれません
話を戻しますが、
・いつ
・どこで
・何をしているときに
・何に向かって
・どのように吠えるのか
を整理したら、吠えないように「ずらし」てみましょう。
「夕方の散歩で、あの家の前で、歩いているときに、家に向かって、大きく吠える」
のであれば、まずはやはり「あの家の前」を通らないようにすべきでしょう。
それでもダメなら、散歩の時間を夕方からずらします。
吠える機会が多くなると、「吠えグセ」ができてしまうので早めに対処すべきです。
「留守番のさせ方」に吠える原因があるかもしれません
「さみしいかも、退屈かも」と思って、留守番をさせるときに「家の外」が見えるようにカーテンなどを開けている飼い主さんが少なくありません。
しかし、犬は基本的に「何か仕事をしたい」と思っていますので、家の外が見えるようだと、通行人や他の犬などが視界に入るたびに「撃退しよう」として吠える恐れがあります。
ですから、留守番中はカーテンを閉めましょう。
「社会化」は他の方法でさせるべきです。
犬の吠えるクセを改善する二つのしつけ
悪い習慣の解消
先ほどもお伝えしたように「吠えやすいシチュエーション」からずらしてみましょう。
例えば、「カーテンを閉める」「散歩の経路を変える」などがそれに該当し、これだけでも悪い習慣が徐々に消えていく可能性があります。
また、「これまでは平気だったのに突然無駄吠えが増えた」という場合は、飼い主さんが知らないうちに何らかの恐怖体験をしてしまったのかもしれません。
一例として、「まだ社会化が十分に進んでいない時期の散歩で、見知らぬ通行人に(悪意なく)撫でられた。怖かった」など。
そして、
「自分は恐怖を覚えたのに→飼い主は笑っている→飼い主を頼ることはできない→吠えるしかない→吠えたら撫でられなくなった(怖くなくなった)」
という体験をすると、少しでも怖い事があるとすぐに吠える犬になる恐れがあります。
「人間からすれば微笑ましい場面」でも犬にとってはそうではないかもしれません。
常に犬の状態に気を配り、このケースでは飼い主が「ああ、ウチの子ちょっと怖がりなので……」などと言って、やんわりと撫でるのをやめさせる必要があります。
吠えずにやり過ごせるようにしつける
難しい事ですが、「他人に撫でられるのが怖い」のであれば、しつけによって「他人に撫でられるのは嬉しい」という状態に変えていきます。
根気が必要ですが、成功すれば犬と飼い主の日々がより良いものになることでしょう。
犬が吠える可能性が高い場面としつけ方法5選
続いては「犬が吠えやすい代表的なシチュエーション」と、吠えるのをやめさせるためのしつけ方法を5つ紹介していきます。
理由1:インターホンの音
犬の習性(音に敏感、飼い主に報告したがるなど)を考えれば、むしろ吠えるのが当然です。
ですから、
- お客さんにはスマホで事前に連絡してもらう
- 宅配物は「コンビニエンスストア受け取り」にする
などの方法で、インターホンが鳴る機会自体を減らしましょう。
「インターホン吠え」が癖になる前に、即対策を始めてください。
もちろん、インターホンが鳴る機会をゼロにすることはできません。
鳴ってしまったときは、すぐに犬を撫でるなどして「嬉しい」という気持ちにさせます。
そうすると、「インターホンが鳴る→吠えずに飼い主のところに行く」という習慣をつけることができます。
理由2:お客さん
まず、「お客さんが来るのが嬉しくて興奮する」という性格の犬がいます。
この場合はお客さんに犬を撫でてもらうと、リラックスして吠えるのをやめる可能性が高いです。
また、「お客さんに警戒心・恐怖心を抱く」というタイプの犬もいます。
この場合は、家から歩いて数分のところで待ち合わせをして、そこに犬も連れて行き、「犬にその人の存在を慣れさせながら家に向かう」ことで、吠えにくくなります。
これをしない場合は、犬にとって「未知の人間がご主人様の家に来た!」という認識になり、大きく吠えてしまう恐れがあります。
理由3:おねだり
エサがほしい、遊んでほしいなどの「おねだり」の意味で吠える犬も多いです。
要求に応えてしまうと「吠えれば良い事があると学習してしまう」ので気を付けてください。
ですから「要求吠え」をしてきたら犬を完全に無視してください。
「少し視線を向ける」というレベルでもダメです(もう少し吠えればなんとかなるかも!という気持ちになるので)。
ただ、「とにかく無視する」というのも案外難しいので、その場から立ち去ってしまうことをおすすめします。
それでも改善しない場合は、すでに要求吠えが癖として強く染み付いている可能性があります。
このケースでは、例えば「飼い主が食事をしているときに吠える」のであれば、そのタイミングで玩具を与えるなどして、犬の気を逸らします。
これで吠えなくなれば、吠えグセは徐々に抜けていきます。
ただし、「物で釣る」のはあまり好ましくないので、吠えグセが抜けたら玩具を与えるのをやめてみても良いかもしれません。
(吠えてしまうのであれば、もうしばらく玩具を与えてみます)
理由4:他の犬に吠える
「他の犬への関心が強く、遊んだりあいさつをしたりしたい」という気持ちで吠える犬もいます。
このタイプの犬を散歩に連れていく場合は、飼い主さんは犬に盛んに話しかけるなどして、犬の注目を常に自分に向けるようにしましょう。自分に視線を向ける時間がある程度長くなれば、その都度褒めます。どうしても難しければ玩具で注目を引きます。
これが習慣になれば、そのうち他の犬がいてもなんとなくやり過ごせるようになります。
ちなみに、このタイプの犬をドッグランに連れていくと、もちろん他の犬に興味を持ちます。
ただ、一度挨拶をすれば満足して吠えなくなるので、「ドッグラン向き」と言えます。
それから、やはり「警戒心・恐怖心で吠える犬」もいます。
社会化が済んでいなかったり、以前の散歩中に他の犬に吠えられたりすると、このタイプの吠え方をする可能性があります。
この状態を改善するには、まず飼い主さんが「他の犬との距離」をきちんとキープしてあげましょう。
他の犬が遠くにいる場合でも吠えないのであれば、思いきり褒めてあげます。
そして、根気よく徐々に「他の犬との距離」を詰めていきましょう。
これで吠えなくなれば、犬としてもお散歩を満喫できるようになるはずです。
吠える原因が分からない・分かってもしつけできない場合は犬のプロに相談を
そして、犬が吠える理由が分からなかったり、分かってもしつけで改善できなかったりするのであれば、犬の専門家に相談することをおすすめします。
「わざわざプロに相談するなんて大げさな……」と感じるかもしれませんが、同じ理由でプロのサポートを受けている人はたくさんいますし、あまり堅苦しくなく、気軽で楽しいですよ。
「一人で抱え込まないことが大事」という意味もありますね。
まとめ
犬が吠える理由、理由の解明方法、しつけの仕方などを紹介しました。「どんな吠え方でも対応方法は一緒」というわけではないので、犬の様子などを見ながら、適切に対応しましょう。また、「犬は吠えるのが当たり前」と考えておけば、冷静でいやすくなるはずです。
困ったときは犬の専門家を頼ることも検討しましょう。