愛犬がプロのドッグトレーナーの指示には従うのに、
飼い主である自分の言うことは聞いてくれない…そんな悩みを抱えていませんか?
実は、コマンドを覚えることと「言うことを聞く」関係性を築くことは全く別物です。
本記事では、犬が人を見極める理由や、
お家でのフリー生活で見落としがちな注意点をプロの視点で詳しく解説します。
記事監修:犬のしつけハグ 川島 恵
Kawashima
なぜ飼い主の言うことは聞かないのにトレーナーの言うことは聞くのか?

多くの飼い主様からいただく切実な悩みの一つに、「ドッグトレーナーの先生の前ではお利口にしているのに、家に帰ると全然言うことを聞かない」というものがあります。
一生懸命しつけを頑張っている飼い主様ほど、このギャップに「どうして?」と空回りしてしまう傾向にあります。
結論から言うと、犬にとって「飼い主」と「トレーナー」は、最初から立ち位置(ポジション)が全く異なっているからです。
動画の中で川島トレーナーが解説している通り、犬は驚くほど鋭く「人」を見ています。
「ゼロの状態」から始まるトレーナーとの関係

ドッグトレーナーが犬と接するとき、それは常に「初対面」の真っさらな状態からスタートします。
犬側も「この人はどんな人だろう?」「どう接すればいいんだろう?」と、相手を慎重に探っている状態です。
そのため、トレーナーは最初から正しいメリハリを持って接することができ、犬に「この人の指示は聞かなければならない」というルールを明確に提示できます。
過去の「甘え」や「許された経験」という蓄積がないため、トレーニングがスムーズに入りやすいのです。
「蓄積」がある飼い主様との関係
一方で、飼い主様と愛犬の間には、これまでの共同生活という長い時間の蓄積があります。
犬はすでに「この人にはこうすれば許してもらえる」「こう接すれば思い通りになる」というパターンを学習してしまっています。
たとえトレーナーから指示の出し方を教わったとしても、犬の中には「でも、いつもの飼い主さんだしな」という甘えが残っています。
この「今までの関係性の蓄積」こそが、言うことを聞かない最大の要因なのです。
犬は人によって態度を変える動物であり、家族の中でも「お父さんの言うことは聞くけど、お母さんの言うことは聞かない」といった差が出るのも、すべてはこの「人を見ている」という特性によるものです。
コマンドを覚えることと「言うことを聞く」のは別物

しつけにおいて非常に重要なポイントは、「オスワリやフセなどのコマンドができること」と「飼い主の指示に心から従うこと(言うことを聞く)」はイコールではないということです。
多くの飼い主様は、形としての動作を教えれば、自動的に信頼関係が築けると考えがちです。
しかし、実際には以下の2つを分けて考える必要があります。
- スキルの習得:言葉(合図)と動作を結びつける作業
- 関係性の構築:この人の言うことには価値がある、あるいは従わなければならないという認識
コマンドは覚えている(やり方は分かっている)けれど、相手を見て「今はやらなくてもいいや」と判断している状態が、いわゆる「言うことを聞かない」状態です。
これは犬が悪いのではなく、犬にそう判断させてしまう関係性に原因があります。
特に、いざという時の安全を守るためのコマンド(マテや呼び戻しなど)は、高い危機感と強い気持ちを持って伝える必要があります。
お家での「フリー」に潜む落とし穴と注意点

「愛犬には自由に過ごしてほしい」という願いから、お家の中でずっとフリー(放し飼い)にしているご家庭も多いでしょう。
しかし、プロドッグトレーナーの視点で見ると、この「自由」がしつけの障害になっているケースが多々あります。
「癒やし」と「しつけ」の境界線

私たちは犬をトレーニングするためではなく、一緒に楽しく過ごすために迎え入れています。
そのため、家の中では「可愛いから」と甘やかしたり、自由気ままにさせてしまったりするのは当然の心理です。
クッションで寝ている姿を見て癒やされたり、写真を撮ったりするのは素晴らしいコミュニケーションです。
しかし、トレーナーが接する1時間や2時間は、常に「トレーニング」という目的を持ったピリッとした雰囲気で行われます。
一方、家庭での生活は24時間です。
この「24時間の緩み」が、トレーニングの効果を薄めてしまうのです。
フリー中の注意点:ルールなき自由は「わがまま」を育てる

お家の中で完全にフリーにしていると、犬は自分の好きな場所で寝て、好きな時に動き回ることができます。
この状態が続くと、犬は「ここは自分のテリトリーで、自分の好きなようにしていい場所だ」と誤認しやすくなります。
その結果、いざ飼い主様が指示を出した時に「なんで自分の自由を邪魔するの?」という反発に繋がることがあります。
「自由」を与えることは大切ですが、それは「ルールの上で成り立つ自由」でなければなりません。
家の中でも一定のルール(ソファに勝手に乗らない、キッチンには入らない等)を決め、それを徹底することが、犬にとっての精神的な安定にも繋がります。
改善のためのステップ:飼い主様が「トレーナー以上」に意識すべきこと

愛犬がトレーナーの言うことは聞くのに、自分の言うことは聞かない…この現状を打破するためには、飼い主様自身が意識を大きく変える必要があります。
実は、飼い主様はトレーナー以上に頑張らなければならないのです。
1. 接する時間よりも「質」と「ツボ」
「自分がお世話をしているのに懐かない、言うことを聞かない」と嘆く必要はありません。
犬にとって好かれる人というのは、必ずしも一緒にいる時間が長い人ではなく、「犬の欲求(ツボ)を的確に満たしてくれる人」です。
短い時間でも、犬が「この人といると楽しい!」「この人の指示に従うと良いことがある」と思える質の高い接し方を意識しましょう。
2. 強い気持ちと一貫性を持つ
犬は飼い主様の心の迷いや自信のなさを敏感に察知します。
「やってくれたらいいな」という弱気な態度ではなく、「安全のためにこれは絶対にやらなければならない」という強い責任感と気概を持って指示を出してください。
また、昨日はダメだったことが今日はOKというような曖昧さは、犬を混乱させ、信頼を損ないます。
家族全員で一貫したルールを守ることが不可欠です。
3. 愛情と厳しさの「両立」

「厳しくすると嫌われるのではないか」と心配される方がいますが、それは間違いです。
本当の愛情とは、ダメなものはダメだと毅然と伝えてあげることです。
可愛がる時は思いっきり可愛がり、指示を出す時は真剣に向き合う。
この両方のバランスを整えることが、犬にとっての「頼れるリーダー」への第一歩となります。
まとめ:今日からできる関係性の見直し

犬がトレーナーの指示に従うのは、そこに明確な「ルール」と「適度な緊張感」があるからです。
お家での生活においても、単なる「癒やしの存在」としてだけでなく、社会のルールを教える「教育者」としての視点を持つことが大切です。
お家でのフリー生活をより良いものにするために、まずは以下のことから始めてみましょう。
- コマンドの練習を、日常の何気ないシーン(ごはんの前、散歩の前など)に取り入れる
- 家の中での禁止事項を明確にし、家族全員で統一する
- 指示を出す時は、犬の目を見て、毅然とした態度で伝える

今までの蓄積がある分、関係性の修復には時間がかかるかもしれません。
しかし、飼い主様が覚悟を持って接し方を変えれば、ワンちゃんは必ずそれに応えてくれます。
愛犬とのより深い信頼関係を目指して、一歩ずつ取り組んでいきましょう。
もし、具体的なしつけの方法や、今の関係性に不安がある場合は、ぜひプロのカウンセリングも検討してみてください。
個々の性格に合わせた最適なアドバイスを受けることが、解決への近道になります。
犬のしつけ ハグ



