犬が落ち着かない、常に動き回る、吠え続ける…。
そんなお悩みを抱えている飼い主さんはとても多いのではないでしょうか?
でも実は、そんな子にこそ必要なのが「何もしない」という時間。そしてそれを「教える」ということです。
この記事では、愛犬に“落ち着く力”を育てるための第一歩として、「何もしない」を教える方法とその効果について、やさしく丁寧にお話しします。
「落ち着きがない」は悪いこと?
「うちの子、落ち着きがなくて…」と心配している飼い主さん。まずお伝えしたいのは、落ち着きがない=悪い犬、というわけではないということです。
特に子犬や若い犬たちは、エネルギーが有り余っていて、目に映るものすべてが刺激になります。興味津々なのは、とても自然なことなんです。
でも、そんな行動が毎日続いてしまうと…
- ストレスが溜まりやすくなる
- 外でのトラブルにつながることがある
- 飼い主さんとの意思疎通が難しくなる
といった、暮らしに支障が出てしまうことも。
だからこそ、犬にも「落ち着ける時間と場所」を用意してあげることが、とても大切になってきます。
「何もしない」を教えることの意味
「何もしないって、何をすればいいの?」と思うかもしれませんね。
犬にとっての「何もしない」は、「今は特に動かなくてもいい」「ここにいれば安心」という感覚を持てること。
これができるようになると、こんな場面で役立ちます。
- カフェでおとなしく待っていられる
- 動物病院の待合室でも静かに過ごせる
- お家で飼い主さんが作業中でも邪魔をしない
- ドライブ中に車内で静かにできる
つまり、「必要のない行動をしなくてもいい時間」が犬にも必要なんです。
まず整えたい「環境」
では、「何もしない」ことを教えるためには、どんな準備が必要なのでしょうか?
まずは犬が安心して過ごせる環境を整えてあげることから始めましょう。
- 静かで落ち着いた部屋(テレビや音楽は控えめに)
- 足元に滑り止めマット(フローリングだと滑って不安になることも)
- クレートや柔らかいベッド(自分の居場所として安心できる空間)
そして大事なのは、飼い主さんも一緒に「静かにすること」。
何かを教え込もうとするのではなく、「ただ一緒にそこにいる」時間をつくってあげましょう。
犬が動き回ったり吠えたりしても、怒ったりせずに、落ち着いた空気を保つことがポイントです。
最初は5分でもOK。短くても、静かな時間を一緒に過ごすことで、犬は「あれ?今日は何も起こらないのかな」と感じ始めます。
タイミングを読む:褒める・ご褒美は「静けさ」に対して
犬がほんの少しでも静かにしていたとき──
伏せてみた。ため息をついた。まぶたがとろ〜んとしている。
そんな小さな“静けさのサイン”を見逃さないでください。
- 静かなトーンで「いい子だね」と声をかける
- やさしく頭をなでる
- 小さなおやつをご褒美としてあげる
ここでのポイントは、「静けさ」に対してだけ反応すること。
もし犬が興奮して飛びついてきたら、あえて無反応でOKです。
犬は、「こうすると褒められる・ご褒美がもらえる」という経験を繰り返すことで、落ち着くことに価値を感じるようになります。
クレートやマットの活用方法
「何もしない」を練習する場として、クレートやマットを使うのもおすすめです。
クレートは、犬にとっての“隠れ家”や“安心の箱”。
マットは「この上にいれば安全だよ」と教えることで、犬にとっての“安心エリア”になります。
例えば、マットを床に置いて「ここで伏せていてね」と指示するよりも、犬が自分からそのマットに座って落ち着いたら褒める…というやり方が自然です。
少しずつ時間を延ばしながら、「マットにいる=静かで気持ちいい時間」と思えるようにしていきましょう。
よくある失敗と対策
「ぜんぜん落ち着いてくれない!」「いつまで待てばいいの?」
そんなふうに感じて、つい声を荒げてしまう…。
これは多くの飼い主さんが経験することです。
でも、そこで怒ったり、焦って動いたりすると、犬も「落ち着かない空気」を感じ取ってしまいます。
また、ご褒美のタイミングがずれて「バタバタした直後におやつをもらった」と誤解すると、間違った学習をしてしまいます。
失敗を防ぐコツは:
- 飼い主が“静かである”ことを心がける
- 静かな時間だけに反応する
- 声ではなく空気で教える(無言の時間も大事)
犬は言葉よりも「雰囲気」をとてもよく感じ取ります。
「何もしない」を覚えた後の変化
この練習を続けていくと、犬の行動や表情に変化が現れてきます。
- 家の中でのソワソワが減る
- 飼い主のそばに静かにいられるようになる
- 初めての場所でも落ち着いて行動できる
特に注目したいのは、「自分で落ち着こうとする力」が育ってくること。
これは「言われたからやる」のではなく、「そうした方が心地いい」と犬が自分で選べるようになる、とても大きな成長です。
飼い主自身にも起きる変化
実は一番大きく変わるのは、飼い主さん自身かもしれません。
- 犬の呼吸や表情の変化に気づけるようになる
- イライラしたり、焦ったりする気持ちが減っていく
- 犬との時間に心が安らぐようになる
犬と一緒に“何もしない”時間を過ごすことは、まるで深呼吸をしているような感覚。
慌ただしい日々の中で、自分自身の心も整っていく。
それは、犬と暮らすからこそ手に入れられる、特別な時間です。
最後に──「何もしない」は最高のギフト
落ち着きがないのは、犬が悪いわけではありません。
“落ち着く方法をまだ知らないだけ”。
その「知らない」を、「知っている」「できる」に変える手助けができるのが、飼い主さんです。
「何もしない」という練習は、とてもシンプルだけど、心にじんわり届くやさしいトレーニング。
犬にとってはもちろん、飼い主さんにとっても、心のギフトになる時間です。
どうか今日から、少しだけでいいので、
愛犬と静かな時間を分かち合ってみてください。
その時間が、未来の落ち着いた笑顔へとつながっていきますように。
犬のしつけ ハグ

